マナビ塾:6月27日(木)「身近な自然に親しむ方法」について学びました。

2024年度のマナビ塾のトップバッター講師として6月27日にご登壇頂きましたのは、西隆昭氏です。

西氏には、2019年11月のマナビ塾「ニツセイ高尾の森の散策」において、ニッセイ緑の財団の事務局長として企画から当日運営まで全てご協力頂きました。(詳しくは、2019年11月のHP記事を閲覧願います。)

退任後は、「森林インストラクター」の資格を取られて活動の幅をさらに広げていらっしゃいます。

なお、ご出身は鹿児島県喜界島で、「小学校には50年毎の立て直しのための学校林があった。そのような環境で育ったことが、今回のテーマの根底に流れる”自然循環の大切さ”の啓蒙に役立ちたいとの思いに通じているように思う。」とのことでした。

以下、200枚を超えるスライド(パワーポイント)をもとにご説明頂いた内容の要点を記述させて頂きます。

◎ 森林インストラクターとは?

森林の仕組みや人との関わり、四季折々に咲く美しい花や鳥、森林の生態について詳しく案内してくれる専門家であり、森林や林業に関する知識を伝える役割を担っているとのこと。「森林のエキスパート」「森林案内人」「野外活動のガイド」「人々と森林のコーディネーター」とも言われており、資格試験は極めて難しかったとのことでした。

◎日本の森の現状について 

~森林の効用(70兆円分)を山村が支えている~

森には、8つの効用があるー 1)様々な生物を育む ・2)地球温暖化を防ぐ・3)災害から守る・ 4)水を蓄える・ 5)快適な環境を提供する・6)癒し効果を生み出す・7)豊かな資源を生み出す・8)文化伝承の場―、その効用は、年間70兆円に相当し、国民1人当たり58万円に上るとのこと。

その森林を支えるのは全国にある市町村の43%を占める山村で、その山村の人口は3%でしかなく、それを当たり前のように享受している現状に警鐘が鳴らされるべきとのこと。

今年度から森林環境譲与税として一人年額1000円が住民税で徴取されるそうですが、納得。

日本の都道府県別森林面積の割合では、平均67%で、1位は高知県で84%、東京は43位ですがそれでも36%もあるとのこと。(東京の森林の荒廃問題については、昨年6月のマナビ塾で筒井講師が語っておられましたのでHP記事を参照下さい。)

~森林の荒廃とそこに住む生物への影響~

戦後森が足りないので400万haに杉・ヒノキを植林するも、S39年の木材輸入自由化以降の価格低下により、植林地の放置が始まり、手入れが行き届かないことで暗い森を生み、保水力を下げていくだけでなく、シカの増殖による樹皮や下層植生が補食され森のバランスが崩れ始めていることが憂慮されるとのこと。

また、シカの運ぶヒルの北限はどんどん北に向かい、シカにたかるマダニも当たり前のように人の生息地に近付いており、マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染が広がっているとのこと。

私たちの普段の生活スタイルが森と切り離されているからこそ、ひとりひとりが森林の環境整備の重要性を認識すべきであると思いました。

◎美しい身近な自然に気付く

バラ、シャクナゲ、別名楊貴妃の居眠りと言われる花海棠、桃源郷として名を冠した里があちこちにある花桃は赤白の源平咲、花蘇芳、紫君子ラン等々美しい色々な花がスライドで紹介されました。

“一葉たご”は別名“なんじゃもんじゃの木”と言われている白いプロペラ型の花でしたが、珍しい木なので「何の木じゃ?」と呼ばれているうちに別名の名前が広まったとの話は皆さん記憶に残ったのでは。

次に身近なイチョウに話が写り、原始時代からの生き残りで「生きている化石」と言われており、実は海外ではとても珍しいものとのこと。日本では街路樹としてあちこちで目にするのに知りませんでした。

続いてイロハモミジと大モミジ、山モミジの見分け方のお話もあり、日頃見慣れた公園の花々や木々も昨日と今日では違っていることに関心を示すことが大事であり、それには散歩をお勧めしますとのこと。皆さん大いに納得でした。

◎花についての関心を深める

~花はなぜ咲くのか~

種の存続のために花が咲くが正解で、おしべとめしべがあり、風媒花と虫媒花、雌雄同種と雌雄異種、実のなる木とならない木等、花はその咲き方にも理由があることと多様性があるとのこと。

~日本原産の植物~

紫陽花や山百合・鬼百合はもともと日本から世界に広がり改良されまた戻ってきたものもあり、花の形状、花びらの枚数等その変化に関心を持って欲しいとのこと。また、名前の由来には歴史や生活に深く根差した名前付けがあり、調べるのも楽しいとのこと。白く朝に咲き夕方には赤くなり散る“酔芙蓉”はその典型とのこと。

~外来種・雑種化・交雑化~

西洋タンポポは一年中受精しなくて種をばらまくので固有の関東タンポポにとって代わって繁殖しているし、シンテッポウユリのように雑種化や交雑化していくものもあるとのこと。

ソメイヨシノ(染井吉野)は江戸彼岸と大島桜の交雑で全国に広まったのだが、クローンであることから病気などにより一斉に枯れるのではないかとの心配もあるとのこと。

また、突然変異が進化を促し、育ちやすい環境にあれば劇的に広まっていくとのこと。

[この後も、花や樹木について興味深いお話をして頂きましたが、記事の制限もあるので省略させて頂きます。]

◎最後のまとめとして 「循環と悠久」

自然環境において、植物を食べる草食動物を肉食動物が捕食し、死んだ肉食動物を土の中の虫・微生物が分解し、それを植物が養分として吸収する循環があり、また、動物がO2(酸素)を吸って吐き出すCO2(二酸化炭素)を植物が光合成でO2(酸素)に変えているという生態系を大前提に人間は生きているにも関わらず、その循環が崩れて来ているように思われる。

よって、ひとりひとりが循環を意識した取り組みをし、循環を取り戻すことが重要ではないかとのこと。

宇宙の誕生は138億年前、地球の誕生は46億年前、人類の誕生は僅か700万年前、一方、太陽の寿命は100億年で既に46億年経過しているので、地球の寿命は30億~50億年と言われている。自然もこの気の遠くなるような時間軸で進んでいることを念頭に置いて、循環を取り戻し、悠久の時を過ごせるようにすべきと思うとのお話で結んで頂きました。

西講師には豊富なスライドで分かり易くご講演頂いたことに深く感謝申し上げますとともに、我々受講者も、身近な草木の日々の変化に関心を持ちながら、自然の循環を取り戻すために何が出来るのかを考え取組んで行きたいと思います。

次回は 7月16日(火)13:30~喜楽会室にて「頼朝の鎌倉幕府誕生秘話」のテーマで中村烈氏を講師に迎えて開催いたします。たくさんのお申込みをお待ちしております。                                            

【 マナビ塾世話役 栗原麗子 記 】

マナビ塾:6月27日(木)「身近な自然に親しむ方法」について学びました。” に対して1件のコメントがあります。

  1. 櫻井省三 より:

    NISのOB会でご一緒以来、驚く程豊富な緑の自然への知識と、花樹木愛に感心しつつ、名前の分からない道端で気になった花の写真をLINEで載せると、すぐに教えて頂ける優しさを有り難く享受させて貰っています。
    森林の衰退は武蔵野の雑木林が点在する我が町でも、地権者の代替わりでどんどん宅地化され、自然破壊と災害への弱さが顕著になる中、国自治体任せではない住民の立ち上がりにも役立つ内容でした。

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