マナビ塾:9月17日(火)「大震災への備え」について学びました。

9月のマナビ塾は、喜楽会東京都支部機関誌「大江戸だより」の名編集長の森岡文明さんを講師にお迎えして、主に大地震への備えをテーマにお話をしていただきました。

森岡さんは、日本生命を退職後に、国の機関であるJST(科学技術振興機構)で「大地震時における災害対策本部の使命と役割」というマニュアルの作成を手掛けられた方で、日生グループでは防災に関して群を抜く知見をお持ちです。

また、日生勤務時には、阪神淡路大震災を神戸で、東日本大震災を仙台で身をもって体験されており、その体験を踏まえた大地震への備えの必要性は説得力があることから、多摩地域の中学校、自治会、企業、多摩市社会福祉協議会などでも地震防災の講演依頼が多数あるのだと思われます。

マナビ塾では2年毎に、今回が3回目のご登場ですが、毎回新鮮な話題をご提供いただいています。この8月には日向灘でマグニチュード7.1の南海トラフ地震の前兆もあったことから、タイムリーな話題となったように思います。

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[1]地震の基礎知識として

まず、地震の基礎知識から聴衆の頭を防災に向けて解きほぐしていきます。

地震には大きく分けて、海溝型地震と直下型(内陸型)地震があります。地震のエネルギーを示すマグニチュードでは、海溝型が遥かに大きいのですが、被害の程度はどちらが大きいかどうかはわからないとのこと。揺れは地震の規模、震源からの距離、表層地盤の3つの条件で決まるそうです。

海溝型は直前の予報もあり、逃げることが出来るが、直下型は突然に来るので予報はできない。そして海溝型は2分~3分と揺れの時間が長いが、直下型は数十秒と短いという違いがあるようです。

プレート(地殻)についても教えていただきました。世界では主要なプレートは15ほどあり、ユーラシアプレート、北アメリカプレート、南アメリカプレート、アフリカプレート、オーストラリアプレートなど大陸が乗っているプレートと太平洋プレート、フィリピン海プレートなど海が乗っているプレートがあり、それらは深さ約5Km~40Kmの地殻で、それぞれが一年間に数cm動いているとのことで、例えばハワイ諸島は毎年6cm~8cm日本に向かって動いているので、両者の距離を6600kmとすると、9000万年~1億1000万年で日本にくっ付くそうです。

日本列島の地殻では、東日本が乗っている北アメリカプレートと、西日本が乗っているユーラシアプレートに、海の太平洋プレートとフィリピン海プレートが潜り込んでいるという構造にあり、そのせめぎ合いで多くの地震が発生することになるとのことです。

もう一つのトラフという言葉は、6000m以上深い「海溝」より浅く幅の広い比較的緩やかな斜面を持つ海底の凹地で、舟状海盆とも呼ばれる地形で、代表的なものとして、南海トラフ、駿河トラフ、相模トラフなどがあり、プレートのせめぎ合いの場所でもあるとのこと。

[2]東京の地盤について

次に私たちが生活をしている東京などの地盤についての話に移ります。

東京の低地の地下には「埋没谷」の存在が確認されており、昔 利根川が東京湾に流れ込んでいて、それが氷河期に谷を作り、そこが柔らかい沖積層で埋まって谷が隠れたため、埋没谷となったようです。そこは粘土や土砂が地下に溜まっている柔らかい地盤で、地震はこのような柔らかい地盤で勢いが増幅される性質をもっているのだとか。

ただ、低地でも上野、秋葉原、小岩駅の東側あたりは台地以上に強い地盤と考えられるようです。また渋谷も低地ですが固い支持層があるようです。

一般には台地の真上の古くから「台」や「丘」がついている地名の場所は安全といわれているようですが、電鉄会社などが戦後の私鉄沿線のニュータウンなどに旧来の地名と関係なく「台」や「丘」をつけたケースも多いので、過剰に心配になる必要もないが、ハザードマップ等を確認し、住んでいる地域の災害危険度を意識しておくことも必要とのご指摘がありました。

[3]高層ビルの揺れについて

次に高層ビルの揺れについて話が展開してゆきます。

気象庁では2023年2月から地震発生時に、長周期震動と緊急地震速報とを連動させた「長周期地震動階級」を発表対象に加えた運用を開始したそうで、階級3以上が予想される地域に発表されることになり、今年1月の能登半島地震で初めて速報が出されたようです。

ちなみに、階級3は立っていることが困難でキャスター付き家具が大きく揺れるレベル、階級4は、立っているのが困難で這わないと動けない。家具の大半が倒れるレベルとのこと。

長周期地震動は広範囲に伝わる性質を持ち、東日本大震災時には、400km離れた東京はもちろん、700km離れた大阪でも55階の超高層ビルの最上階が3m近く横揺れした模様です。エレベーターの被害が多いのですが、エレバーターは業者による点検が終了しないと動かせないこととなっており、タワーマンションなど高層階に住む住民は普段から食料などの備蓄を心がける必要があるようです。

[4]直下型地震について

次に直下型地震に備える知恵を教えて頂きました。

ポイントは、地震発生のその瞬間、最優先で自分の命を守ることだとのこと。

直下型の揺れは20秒程度で、8秒目に加速度が最大になることが多く、身体の安全対策は、瞬時の下敷き等による危険をいかに避けるかが最重点になるようです。家具等の下敷きから逃れるためには、転倒までに逃げること、そのための時間稼ぎをどうするかだとのこと。

理想は何もない部屋で眠ること。身長より高い家具を寝室には置かないこと。家具の上にモノを置かないこと。特に冷蔵庫の上に電子レンジなどの重い家電製品は置かないこと。

「火事だ!火を消せ!」は今はやる必要はありません。ガスは震度5強で自動的に遮断されるからだそうです。

日頃からの準備としては、最低3日間の水と食料を準備しておくこと。

冷蔵庫は停電時でも活用できる。食料備蓄庫として活用する。冷蔵庫部分には詰め込みすぎないようにする。一方、冷凍庫部分には多めの食材をパンパンに詰めておくこと。

カセットコンロと水があれば、冷蔵庫、冷凍庫のストックとレトルト食品等を使って非常時を凌ぐことが出来ますとの貴重なお話もありました。

また、日頃の対策として、ハザードマップで居住エリアの情報を把握しておくこと。(これはwebで確認できるし、市役所、区役所でマップを提供してもらえる)

ラジオで情報収集をするため、携帯用のラジオの準備。

家族間で予め、お互いの安否確認方法を決めておくこと。災害用伝言ダイヤル171(NTT)や、携帯各社の災害用伝言版を活用して欲しいとのこと。

(注)「大江戸だより第29号」の38ページに掲載の「直下型地震に備える(地道な対策が命を守る)」(森岡さん作成資料)もご参考にして下さい。

[5]水害時の避難行動

最後に、水害についての避難行動を教えていただきました。地域の「災害エリアメール」を有効に活用することがポイントのようです。

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予定の2時間たっぷりお話を伺いました。実際にできる防災対応について本当に役立つ知識を教えて頂き有難うございました。

 

次回のマナビ塾は、10月31日(木)13時30分から、日生日比谷ビル6階の喜楽会室で、松尾勲子さんによる「81歳!山おんなのつぶやき」と題して、ご講演をお願いしております。

松尾さんの元気を分けていただきみんなで元気になりましょう。お待ちしております。

【 マナビ塾世話役 続谷恵二 記 】

マナビ塾:9月17日(火)「大震災への備え」について学びました。” に対して2件のコメントがあります。

  1. 中富 洋子 より:

    東京都支部委員長 続谷 恵二様 
    大江戸だより編集長 森岡 文明様

    9月17日マナビ塾 【大震災への備え】

    地震の基礎知識と防災、身をもって閲覧させていただきました。海溝型と直下型に分けて分かり易く説明され、逃げるタイミングなど皆さま熱心に聴講されていましたね。
    日ごろからの準備はついおろそかになりますが、この機会に見直された会員も多いと思います。
    聴講された皆さまの声が広まると更に良いですね。
    貴支部が定期的に防災のマナビをされていることに敬服するとともに、本年1月能登半島地震の当支部へのご支援に改めて御礼申し上げます。

    項目[5]水害時の避難行動ですが、能登・輪島が、9月21日集中豪雨に見舞われました。防災インフラが地震でダメージをうけ、十分な防災伝達ができず被害が拡大した恐れがあると言われています。住民に直接災害情報届ける、スマホ「プッシュ型」ライン、メールの普及が急がれています。

    【大江戸だより第29号】拝読いたしました。
    38ページ「地道な対策が命を守る」これにつきます !
    石川県支部の会員にも配布し共有します。ありがとうございました。

    石川県支部委員長 深田 勉
    HP担当 中富 洋子

  2. 森岡文明 より:

    石川県支部 中富様
    心温まるコメント、ありがとうございました。
    能登半島も2度にもわたる災害、なんとお言葉を掛けていいのか心痛めております。
    今はただ皆様が心萎えずに気丈に生活されることを祈るばかりです。

    ☆「天災は忘れた頃にやってくる / 天災は忘れないだけでは不十分、防備することが重要」
    と言われますが、常に意識だけはしておきたいものです。

     

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